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コラム

MBA column

2026年5月16日(土)開催 卒業生説明会レポート

 

大学病院の医師として臨床現場に立ちながらMBAを取得された髙橋雄一氏に、医療とビジネスの融合を目指された背景や、プログラムでの学びがもたらした変化についてお話を伺いました。説明会の一部内容をご紹介します。

目次



卒業生プロフィール

髙橋雄一 様
順天堂大学医学部 総合診療科学講座
株式会社Y&A COMMUNICATIONS 代表取締役
同社運営サービス「Dr.talk」Founder/運営責任者

Q.MBAを取得しようと思った理由

医師に限らず、一定以上の責任ある役割を担うようになると、個人の専門性だけでなく、組織全体の価値を高め、持続可能な運営を考える視点が求められるようになります。医学部教育では、経営学や組織運営を体系的に学ぶ機会は限られており、臨床・教育・研究といった日々の活動が、組織や社会にどのような価値を生み出しているのかを実感しにくい面があります。

そのため、医療現場で培われる経営感覚は、どうしても経験則に基づく部分が大きく、経営や組織運営を体系的に理解するには限界があると感じていました。そこで、MBAの体系立ったカリキュラムで経営学を学び、自分が日々感じていた課題の解像度を高め、医療現場や社会に還元できる形で解決策を考える力を身につけたいと思い、MBA取得を決意しました。

Q.ウェールズ大学トリニティセントデイビッド(UWTSD)を選んだ理由

周囲に経営学を体系的に学んでいる人が少なかったため、まずはMBAとは何かを調べるところから始めました。国内外にさまざまなMBAプログラムがあり、学習形式、取得できる学位、費用、受講期間も多様だったため、最初は比較するだけでもかなり大変でした。その中で、国内外合わせて10校ほどを検討しました。

フルタイムでMBAに専念する選択肢にも魅力はありましたが、私にとっては医師としてのキャリアを継続しながら学べることが絶対条件でした。当初は、仕事を続けながら学ぶのであれば国内MBAが中心になるのではないかと考えていましたが、UWTSDのプログラムは、英国国立大学のMBAでありながら学べる点が非常に魅力的でした。また、単なる知識習得にとどまらず、実務家としての視野を広げ、ビジネスパーソンとしての成長を促す内容であると感じたことも、大きな決め手になりました。

Q.講義の印象

受講当時は対面とオンラインの過渡期でしたが、オンラインでも授業の質は十分に高いと感じました。むしろオンラインであることで、出張中の方や海外在住の方も含め、多様なバックグラウンドを持つ方々が参加しやすい環境が整っており、全国・世界各地から優秀な人材が集まるプラットフォームに参加できたことは、非常に良かったと感じています。もし特定のキャンパスに通わなければ受講できない形式であれば、こうした多様な出会いや学びの機会は得られなかったと思います。

特に印象に残っている科目は大別して2つあります。1つ目はネゴシエーション(交渉術)です。交渉と聞くと、自分の条件を相手に飲ませるような攻撃的なイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実際には相手と対立するのではなく、双方にとって納得感のある着地点を探るための対話や調整の方法を学ぶ授業でした。自分の考えを適切に伝えながら、相手の立場や意図も理解し、より良い合意形成につなげていくスキルは、日常生活や実務の中でも自然と活きていると感じています。

2つ目は、もともと関心のあったリーダーシップとヒューマンリソースマネジメントです。医療業界は専門性が高く、独自の慣行や組織文化が形成されやすい領域ですが、そのような環境の中で、どのように人を動かし、チームの力を引き出し、働く人が前向きに力を発揮できる組織をつくるかを考えることは非常に重要です。リーダーシップやヒューマンリソースマネジメントでは、組織のルールや制度だけでなく、メンバーの意欲、心理的安全性、チーム内の関係性、そしてリーダー自身のあり方をどのように整えていくかについて、実務に即した形で学ぶことができました。医療現場にも応用できる視点が多く、非常に貴重な経験でした。

Q.MBAプログラムで困難だったこと

医療業界での経験をそのまま活かせる場面は限られており、多くの分野がゼロからのスタートでした。先生方はそれぞれの分野のエキスパートですので、まずは授業内容を理解するために、自分自身の前提知識を引き上げる必要がありました。とっつきにくい分野については、入門書などで大まかなアウトラインをつかみ、そこから授業内容を自分なりに理解し、実務に引き寄せて考えるというステップを踏みました。例えば、金融機関に勤務されている方にとってファイナンスの授業は日常業務の延長として理解しやすい部分があると思いますが、私の場合は本当に一からのスタートだったため、人一倍時間をかけて学ぶ必要がありました。

特に大変だったのはグループワークです。個人の課題であれば自分の中で調整できますが、グループワークでは他のメンバーに迷惑をかけるわけにはいきません。夜9時頃からオンラインで集まり、3〜4時間、場合によってはそれ以上ディスカッションを重ねることもありました。2年間を通じて大変な場面は多くありましたが、その分、これまで触れてこなかった知識や考え方を吸収することができ、人としても職業人としても大きく成長できたと実感しています。振り返れば、非常に充実した2年間でした。

Q.土曜日受講、予習・復習などの時間確保のためのタイムマネジメント方法

まとまった時間を確保するというよりも、通勤中の15〜30分や昼食中の20分など、日々の隙間時間を積み重ねることで、トータルで1日1〜2時間程度の学習時間を確保していました。これまで何となく動画を見ていた時間やスマートフォンを触っていた時間など、無意識に使っていた時間を意識的に学習へ置き換えるようにしました。帰宅後は家庭での役割や別の仕事もあるため、学業を家庭に持ち込みすぎないことも意識していました。時間が十分にあるわけではありませんでしたが、日常の中にある短い時間を学習に変換することで、仕事や家庭と両立しながら継続できたと思います。

一方で、グループワークの時期は特に意識して時間を確保しました。個人課題と異なり、グループワークでは他のメンバーの進捗にも影響しますので、自分の準備不足でチーム全体に負担をかけないようにすることを大切にしていました。そのため、必要な調査や資料の確認にはできる限り時間をかけ、チームに貢献できる状態で議論に参加することを心がけていました。

Q.MBAプログラムで得たことや成果

一言で言うと、物事の考え方や社会への貢献の仕方について、解像度が大きく上がったと感じています。インプットの面では、これまで「この程度でよいだろう」と考えていたラインを超えて、背景情報や関連する論点まで深く調べる姿勢が身につきました。アウトプットの際にも、単に自分の意見を述べるだけでなく、相手がまだ気づいていない視点や、別の角度からの考え方を加えることで、議論の幅を広げることを意識するようになりました。こうした多角的な視点を持てるようになったことで、組織や事業に関する相談を受ける機会も増えたと感じています。

現代はAIの普及により、一定程度妥当な情報や一般的な意見には誰でも容易にアクセスできる時代になりました。だからこそ、情報をそのまま受け取るだけでなく、異なる立場から客観的に捉え直し、相手に伝わる形で提案できる力がより重要になっていると感じています。現在、大学・企業・行政を含め、複数の事業提案や研究計画書の作成・提言に関わる機会をいただいていますが、MBAを通じて、物事を構造的に捉え、社会に還元する意義を明確に伝えるための基盤を築くことができたと感じており、非常に感謝しています。

MBA取得を検討している方へのメッセージ

どのスクールを選ぶべきか悩まれる方は多いと思います。私がMBAへの入学を決めたときも、今後さらに忙しくなるだろうということは予想していましたし、実際に両立は決して簡単ではありませんでした。

ただ、2〜3年後に今より役割や責任が増え、さらに忙しくなる可能性があるのであれば、逆算すると「今」が最も挑戦しやすいタイミングなのではないかと考え、入学を決意しました。修了して1年が経った今振り返っても、あのタイミングで決断して本当に良かったと感じています。
費用については、決して安い金額ではないため、迷われる方も多いと思います。ただ、40代前後になると、キャリアの方向性や学び直しへの意欲に、人によって大きな差が出てくる時期でもあります。その中で、高い意欲を持って自己投資し、多様な業界から集まる方々と学び合えるコミュニティは、非常にユニークで価値のあるものだと感じました。自分の業界では難しいと思っていた課題が、他業界の方から見ると「それならこういう方法がありますよ」と示唆をいただけることもあり、異業種との出会いから新しい発想が生まれる経験を何度もしました。

私自身、給付金制度が現在のように拡充される前の入学だったため、現在入学される方よりも費用面での負担は大きかったです。ただそれでも、MBAを通じて得られた学び、人脈、視野の広がりは、支払った費用以上の価値があったと実感しています。後悔は一切ありません。迷われている方には、ぜひ前向きに挑戦していただき、同じように価値ある経験をしていただければ嬉しいです。