
UWTSD(ウェールズ大学 トリニティセント デイビッド)は、卒業生である新井亨氏の最新の著書『日本人だけが知らないシン・華僑の教え』の出版を記念し、同じく卒業生である諸岡亜貴子氏をファシリテーターに迎えた対談イベントを開催しました。本レポートでは、新井氏の独自の経営哲学と華僑の知恵を、対談形式のハイライトとともにお届けします。
- 成功は個人戦ではなく「ギブ」から始まる団体戦
- ビジネスを成功に導くシンプルな判断基準
- 「節税」は危険!? 信用こそが最強の通貨
- 勇気ではなく「仕組み」で実現する生存率の最大化
- 数字より先に現場!市場変化を読む「現場主義」
- 日本の構造を変える鍵
- MBAの学び
- 登壇者紹介
成功は個人戦ではなく「ギブ」から始まる団体戦
諸岡氏: 新井さんの著書で特に印象的なのが、華僑の成功が個人ではなく団体戦、つまり強固なネットワークに支えられている点です。このネットワークを築くための秘訣は何でしょうか?新井氏: 華僑のネットワークは、安易な名刺交換では成り立ちません。最も重要なのは「仕事をください」と言わないことです。 まずは相手に利益をもたらし、ギブ(貢献)の姿勢を示す。そして、互いに儲けさせる関係性を構築することで、信頼という名の経済圏が広がっていくのです。 もし儲かる話でないなら、彼らは付き合いを切り、時間を無駄にしません。人脈は偶然ではなく、誰が来ていて、誰と話したいかを事前にリストアップし、 その人にどんなメリットを提供できるかを徹底的にリサーチして設計することが肝心です。名刺を集めるのはポケモンカード集めと同じで意味がない。 儲けさせてくれた人に対しては、食事代は「俺に払わせろ」という形で、次の利益につながる関係性を保ちます。 この継続的な相互利益こそが、アウェイの環境でも93%という驚異的な勝率を叩き出す基盤です。
諸岡氏: 相手のデメリットを先に伝えるという姿勢も、日本のビジネスと大きく異なりますね。
新井氏: その通りです。自分のサービスの良い点だけでなく、「これはできません」「ここが悪い」というデメリットを最初に開示します。プライドの高いベンチャーほどやりたがりませんが、華僑はこれによって初期の信用を得ます。デメリットを隠す人は、その後の協力関係において信頼されないからです。
ビジネスを成功に導くシンプルな判断基準
諸岡氏: ビジネスが高度化する中で、どうしても意思決定が複雑になりがちです。 その中で、華僑は何を基準に、判断をシンプルに保っているのでしょうか?新井氏: 経営はシンプルな「顧客数 × 価格 × 購入回数」の掛け算で捉えるべきです。この掛け算において、購入回数を2回に増やすだけで売上は倍になります。だからこそ、複雑な商品やサービスを増やすのではなく、売上の8割を占める最大公約数に絞り込む勇気が重要です。例えば美容室であれば、カット・カラー・白髪染めだけで80%の顧客をカバーできます。それ以外の特殊なメニューを増やすと、スタッフの教育や休日の調整など、複雑な要素が増え、スピードが失われるのです。
諸岡氏: 価格設定におけるイメージさせる力についても、具体的なお話がありましたね。
新井氏: 価格はイメージとの勝負です。ペットボトルの水を1,000円で売るのは難しいですが、ベンツのSクラスを500万円で売れば安いと感じるのと同じです。顧客が頭の中で想定しているイメージを超えたとき、その価格は適正と判断されます。また、富裕層であっても、後から追加オプションで金額が上がることを嫌います。「ここまでやって1円も取りません」と明確に打ち出すことで、問い合わせが5倍以上増えるといった効果が生まれます。無駄なキャンペーンを次々に打つのではなく、シンプルな価格でリピートさせる仕組みを構築するべきです。
「節税」は危険!? 信用こそが最強の通貨
諸岡氏: 信用は最大の資本という考え方は、資金調達を経験した身として深く共感します。日本の経営者が陥りがちな信用を損なう行為は何でしょうか?新井氏: 最も危険なのは節税です。儲かっているのに節税保険などで純資産を圧縮する行為は、会社の成長を遅らせ、将来の選択肢を奪います。金融機関から見れば、税金をきちんと納めず、会社の純資産を増やさない経営者は信用できません。日本で社長が信用されない最大の理由は、法人税率の安い800万円以下に利益を抑えようとするあまり、赤字・黒字を繰り返す経営が多いからです。
諸岡氏: 華僑は、不動産を保有することで信用を高めているという点も興味深かったです。
新井氏: 華僑は納税を社会貢献であり、信用(融資枠)を高める戦略と捉えています。そして、公的に証明できる資産(有名物件の不動産など)を保有するのは、金融機関や人に信用してもらうためです。実際に儲かっている人ほど、無駄な装飾品などはつけません。それは、運用スキルがないと判断されるからです。また、ベンチャーが失敗する原因の多くは、資金調達後に立派なオフィスに固定費をかけすぎて、キャッシュを溶かしてしまうことです。毎月プラスのキャッシュフローが回っているか、これが信用を測る最もシンプルな基準です。
勇気ではなく「仕組み」で実現する生存率の最大化
諸岡氏: 負けない戦い方として、撤退ラインの設定や、変動費化によるリスクコントロールが語られていました。AI・ロボット事業にも、この考え方は適用されますか?新井氏: はい。固定費(例:立派なオフィス)を増やすベンチャーは失敗します。常に変動費化を目指し、最悪の事態でもダメージを最小限に抑えることが重要です。例えば、不動産投資であれば、最悪の空室率30%や金利倍増を想定し、赤字額が許容範囲内であることを確認します。これが負けない戦い方です。
華僑は、業界分析で弱いところ(競争相手がいない場所)を見つけて小さく勝ち、そこから参入障壁の高いレベルへと事業を拡大させます。横展開で店舗数を増やすよりも、百貨店に出店するなどレベルを上げることを重視するのです。そして最も重要なのは、現場に適切な裁量と報酬(部合制)を与え、社長の給与を超えてもいいという考え方を持つこと。社員が自分がいくら利益に貢献しているかを把握し、報酬を得られる仕組みこそが、組織全体の成長速度を変える鍵となります。
数字より先に現場!市場変化を読む「現場主義」
諸岡氏: 市場の変化をいち早く捉えるために、新井さんはどのように行動されていますか?新井氏: 経営者の机上での分析は、富裕層の視点に偏りがちです。華僑は、現地の生活レベルにまで足を運び、リサーチする現場主義を徹底します。例えば、海外出張でも高級ホテルに泊まらず、現地の人の生活に合わせたリサーチを行います。数字よりも先に現場の空気が変わることを察知し、迅速に意思決定することが重要です。
現場の従業員に裁量を与え、顧客の不安を解消する情報(料金の明瞭化、追加費用なしの明記など)を提供することが、現代のサービス業では決定的に重要です。例えば、「お問い合わせください」と書かれたホームページでは意味がありません。「3日でこれぐらいの料金」と具体的に明記し、「これ以上一切かかりません」と宣言することで、問い合わせ率は5倍にもなります。特に女性は、少しでも分からないことがあれば購入しません。現場の声を聞き、その不安要素を解消する情報を発信することが、D2Cビジネスやサービス業の成否を分けます。
日本の構造を変える鍵
諸岡氏: 新井さんは今、介護や再生医療といった、確実に市場が伸びる分野で事業を展開されています。AI・ロボット分野における日本の競争力を高めるためには、何が必要でしょうか?新井氏: まずは中国のスピードとデータ収集力を、いいものはいいと認める謙虚さが必要です。そして、日本独自の強みを活かし、構造そのものを変える必要があります。例えば、介護や医療の現場は人手不足かつ資金難です。ここに高額なロボットを導入することはできません。だからこそ、中途社員を雇う感覚で利用できるサブスクリプション型のサービスを提供し、現場の生産性を上げること。ロボットは文句を言わず、24時間働き、データで賢くなるため、退職理由の8割とも言われているハラスメントリスクや人間関係の離職といった問題を抱える人間よりも、コストパフォーマンスが高いのです。
MBAの学び
諸岡氏: MBAで得られた最も大きなものは何でしょうか?新井氏: 金融機関の人と対等に話ができる知識を得たことです。コーポレートファイナンスを学び、決算書の見方や分析能力を高めることで、金融機関と対等に交渉できるようになります。他人資本で事業を拡大するには、黒字で納税し、さらに知識武装することで信用力を高めることが最も効率的な道です。
本イベントは、新井氏の実践的な知恵と、グローバルな視点から見た日本のビジネス課題が浮き彫りになる、非常に濃密で刺激的な時間となりました。華僑の「負けない」戦略は、AI・ロボット時代を生き抜くための普遍的な経営哲学として、参加者にとって大きな学びとなりました。ご登壇いただいた新井様、諸岡様、そしてご参加いただいた皆様に心より感謝申し上げます。
登壇者紹介
登壇者新井亨 氏
ARAIインベストメント代表
サブスクD2C総研代表取締役
株式会社Telemarketing One 代表取締役
AZ日本AIロボット株式会社ファウンダー
UWTSD22期生。2015年にMBAを取得。
年商1,000億円以上の企業のサポートも手がけるサブスクD2C業界の第一人者。北京へ留学し、在学中に貿易会社などで起業。その後、不動産、美容、貿易など複数のビジネスを成功させたシリアルアントレプレナー(連続起業家)。サブスク事業やSaaS事業のクライアントのマネタイズ実績は累計1,000億円以上。2024年1月、東京証券取引所プロマーケット市場へ新規上場を果たす。海外での経営実績が豊富で、アジアを中心とする財閥企業や華僑系企業とのネットワークを持つ。日本初となる双腕AI搭載バリスタカフェロボットを企画・販売し、AIロボットとサブスクを組み合わせたビジネス特許も保有。日本の素晴らしい技術を世界中へ発信するため、AZ日本AIロボット株式会社の共同創業者として経営に参画している。
ファシリテーター
諸岡亜貴子 氏
株式会社Forcesteed Robotics 代表取締役 COO&CFO
UWTSD33期生。2024年にMBAを取得。
約10年間、人事・人材コンサルタントおよびプロジェクトマネージャーとして、重工業、ロボティクス・機械メーカーなど累計約150社の採用課題解決に貢献。コンサルタント2,000名中上位10名に選出され、年間で2度のMVPを受賞した実績を持つ。「人手不足を先端技術で解決する」という使命のもと、2018年よりロボティクスベンチャーへ転身。現在はロボットベンチャーや大手企業での事業企画に携わる。 非エンジニアながらロボット技術を深く理解し、MBAと国家資格キャリアコンサルティング技能士2級の戦略的視点を融合。複雑かつ難易度の高いプロジェクトを運営するプロジェクトマネージャーとして、技術チームとビジネス目標を確実に結びつける役割を担う。
書籍のご紹介

NVIDIA、TSMCなど世界的企業の創業者が華僑である秘密、知っていますか?時代に合わせて進化し続ける「シン・華僑」の最新成功哲学を公開。日中で成功を収めた日本人実業家と「シン・華僑」の最強コンビが、アウェイ環境でゼロからビジネスを成功させる思考法、そしてあなたの人生を変えるヒントを凝縮した一冊です。フォレスト出版(2025年7月20日)
https://www.amazon.co.jp/dp/4866803320

最新医療を行う医療法人の理事であり、不動産、美容、貿易などの複数の事業を成功させた起業家でもある著者が「最強の若見え術」を明かしたユニークな本。 富裕層やトップ営業マンなど、ビジネス成功者たちの共通点。 それは、美意識が高いこと。 美しさや若さを「人生を有利に生き抜くための手段」ととらえているのです。 成功者は、成功してお金があるから若さに投資しているのではなく、若く見られる努力をしてきたから成功をつかんだのです。現代の医療は、再生医療、幹細胞治療、遺伝子治療、ゲノム医療など日進月歩であり、これらの最新技術により薄毛や老化の悩みも遺伝子レベルで修復できるようになりました。 河出書房新社(2025年10月27日)
https://www.amazon.co.jp/dp/4309295479

サブスクD2C業界の第一人者が、AIロボットとサブスクを組み合わせたまったく新しいビジネスモデルを解説。「人手不足」は絶望ではなく、進化の合図です。人がいないことに悩むのではなく、「じゃあ人以外の力を借りよう」と発想を転換することが、これからの時代に必要な経営の感性なのです。私たちがロボットと共に働くことで、人は人にしかできない創造やケア、感情に寄り添う仕事に集中でき、ロボットは業務と収益の安定を担ってくれるでしょう。扶桑社(2025年11月1日)
https://www.amazon.co.jp/dp/4594101585