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コラム

MBA column

2026年4年17日(金)開催<学友会>講演会レポート



当MBAプログラムの学友会が主催する、卒業生登壇の講演会が開催されました。テーマは、「ローカルな知をグローバルな価値へ ― アーユルヴェーダと国際ビジネスに学ぶ、自分の強みの活かし方」です。30期の卒業生である新倉亜希氏(アーユルウェルネス株式会社 代表取締役)が登壇し、新倉氏ご自身の言葉で、5000年の歴史を持つインド医学「アーユルヴェーダ」を軸にした事業展開と、MBAの学びがどのようにビジネスの現場で活きているかを語っていただきました。

プロフィール

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新倉亜希(にいくらあき)氏
アーユルウェルネス株式会社 代表取締役/アーユルウェルネス リゾート沖縄 オーナー/アーユルヴェーダビューティーカレッジ 学長

東京都出身。会社員を経て2006年に本場インドにてアーユルヴェーダヘルスコンサルタントの資格取得。 その後、専門学校やサロンを設立して自ら学長を務め、2018年にアーユルウェルネス株式会社として法人化。 沖縄のホテルなどとコラボして地産地消のメニュー提案。早稲田大学非常勤講師も務める。 2024年1月には美ら海水族館から車で3分、ビーチまで徒歩3分の星空が広がるアーユルウェルネスリゾートOkinawaをオープン。 120坪の農園も併設され、「自分に目覚める場所」として心身のデトックスプログラムを提供。 アーユルヴェーダの第一人者としてご活躍中。2020年に本プログラムに入学。2023年に英国MBAを取得。卒業論文テーマ「ウェルネスツーリズムを通じて地域活性化につなげるイノベーション戦略」。

1. アーユルヴェーダとは何か ― 5000年の「人生のOS」

アーユルヴェーダはサンスクリット語で、「アーユス」が「長寿」、「ヴェーダ」が「知恵」。つまり「長寿のための知恵」という意味です。マッサージの手技の名前ではありません。日本ですとおでこにオイルを垂らす「シロダーラ」のイメージが強くて「マッサージね」と言われることが多いのですが、アーユルヴェーダは本当にインドの医学・哲学です。

インド政府公認の医学で、AYUSH省という厚生労働省のような伝統医学の省の管轄となり、正式な医学体系です。インドでは医師免許が必要で、西洋医学と並ぶ国家資格の医療として位置づけられています。

MBAの視点で行くと、アーユルヴェーダというのは「人のパフォーマンスをどう最大化できるか」という総合的なオペレーションシステム、OSみたいなものです。今でこそダイバーシティと言いますけれども、遺伝的な体質を見て、その人に一番最適化した健康法やパフォーマンスを上げる方法を、5000年のエビデンスと共に作り上げているのがアーユルヴェーダです。

ホリスティック医学とも言われていて、感情、睡眠、食事、意思決定なども健康の1つとして見ていきます。症状という結果だけでなく、背景にある生活習慣や体質も見る。万人に同じ薬やソリューションではなく、その人に最適化したものを提供するのがアーユルヴェーダの健康法です。

すべての医学のルーツは、5000年のアーユルヴェーダから発生していると言われていて、中医学、ギリシャ医学、アラビア医学もここがルーツだと言われています。2022年のコロナ禍では伝統医療が再度見直され、WHOとアーユルヴェーダが手を組んでヘルスケアの潮流として注目されています。

2. なぜこの道に入ったのか ― メニエール病からの転機

私は全然自分の体質に合わない外資系金融の仕事をしていて、限界を感じて「メニエール病」になってしまいました。アーユルヴェーダでは人の体質を「ヴァータ」「ピッタ」「カパ」の3つに大別します。私はカパ体質で本当はのんびり過ごしたいタイプなんですが、成績を競うような環境で頑張るほど悪化し、「成功と健康は両立しない」ことを知りました。

そこから海外の山奥に自分を隔離してこもった際、掘っ立て小屋のアーユルヴェーダのドクターに出会って、「You are not sick」と言われました。治すのではなく「整える」という思想です。「病気ではないよ」と言われてホッとしました。整え方も「鳥の声で目覚め、虫の声で寝る」「目の前の生えてるものを食べなさい」「お腹が鳴ってから食べなさい」といった自然療法でした。これで2年間治らなかったメニエール病が2ヶ月で治ってしまった。これを伝えなくてはと思い、インドに7年間通いました。

そこで自分の「ダルマ(使命)」に気づきました。私の名前の「亜希」は「アジアの希望」と書きます。アメリカの証券会社の時には生かせませんでしたが、アジアの仕事で人をサポートする希望になることに「ダルマ」を感じ、アーユルヴェーダを広めることが自分のミッションになりました。
インドで修行して信頼を築きましたが、当時は日本人がインドに行くのはレアでした。「アーユルヴェーダの伝道師になりたい、人生かけます」と師匠に伝え、何度も勉強して、使命を語って、約束を守って結果を返すことで、少しずつ動いてくださいました。インドは人との関係が非常に重視されます。実力だけでなく「信頼できるか」が大事で、お家に招かれて初めて信頼関係が築けるような感じです。そういったものを積み重ねて、今ではソウルフレンドのほとんどがインド人です。

3. 独自メソッド ― 3つの知恵を融合する「和のアーユルヴェーダ」

私のメソッドは、3つの叡智を掛け合わせた独自のウェルネスモデルです。

1つ目は、インド5000年のエビデンスの「アーユルヴェーダ」。2つ目は「沖縄のブルーゾーン」。世界5大長寿地域の1つである沖縄の食、自然、共同体「ゆいまーる」、生きがい。3つ目は「日本古来の長寿健康法」。余白、季節、発酵食などです。

私は「和のベーダ」として、インドのヴェーダを投影しながらも日本人にあったアーユルヴェーダを伝えています。

私がアーユルヴェーダを通して何をしたいかというと、現代人の健康を司るための「Environmental Medicine(環境医学)」です。環境そのものが治療になる、環境が見えない処方箋になる。それを届けたいということで、アーユルヴェーダを中心にしたリゾートホテルを沖縄に建てました。

沖縄の「おばぁの知恵」はアーユルヴェーダとそっくりなんです。インドのターメリックは沖縄では「ウコン」。糖尿病に使うゴーヤも沖縄にあります。東京で無理にやるのではなく、祖先がアーユルヴェディックなことをしている場所でやることが「和のアーユルヴェーダ」に必要だと思って沖縄に建てました。

4. 沖縄での地域共生モデル ― MBAの論文を実践する

私も足掛け15年目になりますが、地元の方ではないという壁がありました。MBAの修士論文のテーマは「地域イノベーション」でしたが、まさにその研究内容を自分の事業で実践することになったわけです。

セラピストには地元のシングルマザーの方を雇用し、農園は退職した高齢者の方々にお願いし、食事は地域のシェフにアーユルヴェーダの調理法を教えて委託する。近隣のホテルとも連携してお風呂やスパを相互利用する。地域全体が恩恵を受ける「三方良し」の共生モデルを作ることで、外部の人間が買えないと言われた集落の土地にホテルを建てることができました。

地域の方によく言うのは、「外来者だからこそ沖縄の価値が見えた」ということです。地元では普通の野菜として取り扱われている冬瓜も、アーユルヴェーダの物差しを入れると非常に価値の高い薬効食材になる。外部の視点と地域の資源を掛け合わせることが、地方創生の鍵だと実感しています。

5. 世界へ繋がった実績と挑戦

直近では、2025年の大阪万博でインドパビリオンの方から、「AYUSH」というインド政府の辞令をいただいて、アーユルヴェーダのハーブの展示や登壇をさせていただきました。また、インド政府から選出されて「世界のウェルネス専門家36人」に選ばれ、ドバイで登壇してきました。

「アーユルウェルネスリゾート沖縄」の滞在ウェルネスでは、『VOGUE』などの取材やエミレーツ航空との提携、富裕層向けの「体質改善プラン」なども行っています。一番のおすすめは「エグゼクティブ・パフォーマンス・プラン」です。

卒業してからの方がMBAの同期などとコラボレーションすることが多くてプラスになっています。人脈は大切です。
海外では謙虚なだけだと理解してもらえないので、実績を可視化して発信することが大事です。専門家はいっぱいいますが、私は「環境から整える」という超専門家になることを意識しました。

6. 道を切り開くための秘訣

25年のキャリアの中で、私が大切にしてきたことをまとめると次のようになります。

・本物に会いに行く
・使命(ダルマ)を自分の言葉で語る
・誤解をチャンスに変える
・有言実行で実績を可視化する
・超専門家になる
・自分の痛みをブランドに変える

日本では美容などのエステのイメージが強いアーユルヴェーダですが、インドやスリランカで第一次の情報に触れ、五感で本場を体験することは絶対にやるべきです。授業で習ったことをそのまま言うだけでは言霊が飛ばない。自分の言葉で、人生を捧げてやりたいという「使命」を語ることが、人を巻き込む力になります。

インドの諺に「一番収穫できる実は、手の届かない一番上にある」というものがあります。多くの人は途中で引き返してしまいますが、諦めずに最後まで登りきること。メニエール病という「痛み」があったからこそ、誰かを救えるブランドになれた。悩んだ経験を隠さず見せていくことで、共感の輪が広がっていくのだと実感しています。