エンジニアとしてキャリアをスタートし、現在はオリックス銀行株式会社 デジタル戦略推進部にてデジタル推進のエキスパートとして活躍されている卒業生に『学びが即実務に活かせる』MBAの学びについてお話を伺いました。説明会の一部内容をご紹介します。
目次
卒業生プロフィール
牟田香奈 様
国立大学卒業後、システムエンジニアとしてビジネスキャリアをスタート。 その後、複数のSE専門資格を取得。人の統制ではなく、環境や仕組みによってプロジェクトを成功に導くために、間接部門へ異動。 パフォーマンス向上のための社員教育や組織作り、デジタル技術の導入などに携わる。 経営学全般の実践に役立つ学びとして本プログラムに2020年入学。経営視点を踏まえたシステム提案などでMBAの学びを活かす。その後、人的資源管理領域の論文 「日本における成果主義的人事制度が組織市民行動に及ぼす影響」を執筆して2022年に学位取得。 卒業後、MBAホルダーとして転職(現職)。社外の活動として、下記活動にも従事。
・一般財団法人日本科学技術連盟 ソフトウェア品質保証プロフェッショナルの会 企画委員
・ウェールズ大学トリニティセントデイビッドMBA日本語プログラム 学友会理事(東京29期)
Q.MBAを取得しようと思った理由
私は自分のこれまでのキャリアを活かし、いずれは組織開発に携わりたいと考えていました。人材育成や、システム開発プロジェクトの効率的な運営といった組織論的な側面にも強い関心がありました。しかし、日本ではそういった能力を資格として表す手段が限られています。自身のキャリアについて熟考していた時期に、MBAを取得した知人から、MBAはビジネスの総合格闘技のようなものだと助言をいただきました。偶然にも、その方からウェールズ大学※の卒業生をご紹介いただく機会がありました。様々な話を伺う中で、MBAの取得に強い興味を持ちました。複数のビジネススクールを検討した結果、最終的にUWTSDのMBAプログラムを選択しました。
-前職ではSEをされていたとのことですが、その時に管理職を経験されたり、SE部門以外の部門に移動を希望されていますが、何か自身の課題をお持ちだったのですか。
世の中の流れとして、個人でプログラムを書いて開発するスタイルから、ノーコード・ローコード開発やアジャイル型開発、さらにはDXへと変化してきていました。20代から学んできたスキルが時代に合わなくなってきていると実感していました。
銀行への2年間の出向経験を通じて、様々なソリューションを組み合わせてより良いものを作り上げる企画の経験を得ました。この経験から、新しいSE像を模索するようになり、本格的に人材育成にも携わりたいと考えるようになりました。そのため、人事部門への異動を希望し、社員教育に携わりながら、エンジニアとしての経験を活かして人事領域のDX化にも取り組みました。
Q.ウェールズ大学トリニティセントデイビッド(UWTSD)を選んだ理由
入学の1年前は他のビジネススクールにも興味があり、平日夜間の講義を受講していましたが、平日の通学の難しさを感じていました。また、幅広い学びも重要ですが、特にHRM(人的資源管理)を中心に学びたいという希望がありました。UWTSDでは、立教大学のリーダーシップ研究の第一人者である石川先生がHRMとリーダーシップを教えているという点が魅力的でした。また、講義が土曜日開催という点も、最終的にこのMBAプログラムを選択した理由です。
-石川先生の学会発表には今も参加されていますか?いわゆる縦のつながりもありますか?
UWTSDを卒業した年、石川先生のご指導で学会発表させて頂く機会を得ました。石川ゼミでは、卒業生が集まる会が年に2回程度あり、石川先生を交えた懇親会を実施しています。また、毎年の学会でも集まる機会があります。
Q.入学前にもっていたイメージとのギャップ
私の入学はちょうどコロナ禍の直前でした。当初は新宿校でのリアルな講義を想定していましたが、4月からオンライン講義に切り替わりました。入学前のリアルな講義の見学で感じた講師の方の迫力や学生とのやりとりの臨場感が、オンラインではやや薄れてしまった印象がありました。一方で、オンラインになったことで集まりやすくなったという利点もありました。例えば、仕事終わりの夜21時から23時までオンラインでミーティングを行うことができました。グループワークが多かったため、この柔軟性は非常に有益でした。
Q.MBAでの学びを最大化するため、受講にあたって心がけていたこと
課題に真摯に取り組むことが最も重要だと考えています。MBAでは自分で考えることが非常に重要です。他人の作成したスライドを見るだけでは、一定の学びは得られるかもしれませんが、そこから自分で何かを生み出すことは難しいでしょう。課題に真剣に取り組み、常に新しい発見をしていく姿勢を2年間続けることで、実りある結果が得られると思います。Q.土曜日受講、予習・復習などの時間確保のためのタイムマネジメント方法
コロナ禍でテレワークに移行したため、仕事終了後すぐに勉強モードに切り替えるよう心がけました。課題が多いため、すぐに自分のパソコンを開いて次の課題を確認するようにしていました。毎日少しずつ進めることが重要だと感じました。また、家族や友人の協力も大きな支えとなりました。
Q.MBAでの学びが実務で活かされていると感じる部分
MBAでの学びは、様々な形で実務に活かされています。50歳を過ぎての転職活動では、MBAを持っているということで、自ら学び続ける力があるということや、問題を発見する力があるということをアピールできました。そのおかげで、年齢のハンデを感じることはありませんでした。また、デジタル推進の業務では、システム導入が会社の業績にどのような影響を与えるかをコスト削減以外の観点からも提案できるようになりました。
さらに、MBAで学んだ交渉学は、組織改善の場面で非常に役立っています。自分の考えを一方的に押し付けるのではなく、状況に応じて適切なアプローチを取ることで、より効果的に組織を変えていく力が身についたと感じています。
これからMBAを目指す方へメッセージ
MBAは経営者や起業家がとるものと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、現場をより良くしたいという思いがあれば、MBAを取得する価値は十分にあると思います。MBAで得られる知識やスキルは、自己成長の機会としてもおすすめです。質疑応答
説明会参加者の方からご質問をいただき、牟田様のMBA経験からご回答をいただきました。一部ご紹介させていただきます。Q.論文執筆がキャリアや業務に活かされていますか?
A.私のMBA論文のテーマは組織市民行動と心理的安全性についてです。心理的安全性というのは、自分が安心して甘えられる環境ではなく、厳しい状況でもお互いに意見を言い合える環境のことです。
この学びを今の職場での行動に活かしています。かつての組織はピラミッド型が一般的でしたが、最近では立場を超えたフラットな環境を目指す企業が増えています。例えば、上司から指示を受けたときに、ただ受け入れるだけでなく、必要なら「なぜそうするのか」を自分なりに考え、意見を伝えることも大切です。その際に、反発が起きずに意見を伝える、受け入れる環境が大切ですが、MBAでの学びを通じて、立場の違いを超えて全員で良いものを作り上げる環境づくりができるようになったと感じています。
Q.SEとして銀行への常駐経験があったとのことですが、現在、ユーザー企業側にマネジメントの立場で入社した際、苦労したことはありますか?また、実務でMBAが活かされたと感じた瞬間はどんな時ですか?
A.SEとしての経験は、現在の業務にも活きています。クライアント先での仕事は、その会社の文化を理解し、要望を聞いてシステムを作ることが中心でした。今の仕事も基本的には同じなので、ユーザー企業に入って特に苦労したことはありません。
私が組織作りや人材育成に興味を持ったのは、様々な立場の人々と協力したいという思いがあったからかもしれません。以前の職場では、常駐先でユーザー企業の新人教育を任されたこともありました。今は自社のシステムをユーザー部門の方達と一緒に開発・導入していますが、フラットに意見交換をしています。
ただ、全ての部門でそういう関係ができているわけではないかもしれません。機会があれば、心理的安全性が自分の周りだけでなく全社的に広がるような活動をしていきたいですし、その際は、MBAの学びを活かしていきたいです。
※2018年にウェールズ大学トリニティセントデイビッド(UWTSD)へ組織統合する前の名称。