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コラム

MBA column

2024年5年20日(月)開催 卒業生説明会レポート



現在、東証プライム上場企業の常務執行役員で、過去にヨーロッパ統括会社などの社長を歴任された卒業生に、MBAを取得しようと思ったきっかけから取得後のキャリアの変化までをお話しいただきました。説明会の一部内容をご紹介します。

目次



卒業生プロフィール

T・H 様
新卒で当時未上場の機械部品メーカーに入社、1年目で社長秘書に任命されて経営の要諦を間近に学ぶ機会を得る。30代前半から国内子会社社長、中国子会社総経理、フランス子会社社長として経営を担い、その後ヨーロッパ統括会社の社長を務める。帰国後は本社の常務執行役員として活躍中。2020年に本プログラムに入学し、2023年に英国MBAを取得。

<経歴>
1985年 4月 大学卒業後 機械部品メーカー 入社 (社長室配属)
1993年 11月 国内生産子会社 社長
1997年 5月 中国生産子会社 総経理
2000年 12月 フランス生産子会社 社長
2005年 5月 ヨーロッパ統括会社 社長、本社 取締役
2014年 6月 本社 常務執行役員 (ヨーロッパ統括会社 社長)
2017年 7月 帰任、特命担当・常務執行役員 (本社駐在)
2020年 10月 ビジネススクール入学 (英国国立大学UWTSD MBAプログラム)
2023年 1月  英国MBA取得

Q.MBAを取得しようと思った理由

私は海外勤務の期間が長かったのですが、元々海外でMBAを取得してみようかなという気持ちはありました。しかし、帰任がいつになるか分からないため、なかなか踏み出せずにいたわけです。結局、その希望は実現しないまま日本に帰ってきて、その後は海外絡みの仕事をしていたのですが、2020年に世界中でコロナが蔓延して海外へ出られなくなり、かなり自由な時間を持てるようになりました。そこで、そうした時間を個人的にも有効に使えないかと考えた結果、MBAの取得を決断したというわけです。

私が秘書として仕えていたのは会社の創業社長で、その独特の経営手腕を間近で見る機会を得ました。そして、自分が子会社の経営を担うことになった際には、秘書時代に見て記憶に留めていた手法をそのまま実践したがゆえに、経営がある程度上手くいったのだろうと思っています。しかし、経営者として自分が執った戦略の妥当性を理論立てて人に伝えるのが非常に難しいこと、また、自分が過去に下した経営判断の是非を再評価する客観的な基準をそもそも持ち合わせていなかったことに気付いたわけです。自分がやってきた経営は、果たして他の会社でも通用するのかという疑問もあり、MBAを学ぶと同時に、自分がやってきた経営の正当性を再確認してみたいという願望が大きくなっていきました。

-ご経歴を拝見しますと、30歳くらいで初めて子会社の社長を務められて、その後も海外の複数の子会社で社長を歴任されていますが、それでもやはり、お話しいただいたようなご不安というか客観的にどうなのかと思われることがあったのでしょうか。
恐らく経営にはある程度の定石というものが存在すると思います。しかし、私の頭の中にあったのは、私の勤務先における経営の定石であって、一般的な経営のそれではない可能性があると考えました。私は、勤務先の子会社のプロ社長とは言えるかもしれませんが、世間一般でいうプロ経営者であるのかどうか、自分としては確信を持てず、不安な気持ちがありました。

Q.ウェールズ大学トリニティセントデイビッド(UWTSD)を選んだ理由

UWTSD を選んだ理由はいくつかありますが、まずは、コロナ禍の中で入学の時期が非常に好都合であったことです。また、当初は講義がオンライン形式で行われたのですが、もし途中で対面講義に切り替わったとしても、学校が会社や自宅から通える場所にあったこともやはり好都合でした。そして、私はヨーロッパ勤務が長く、英国の顧客も度々訪問していましたので、ウェールズ大学があるエリアのことをよく知っており、親近感があったことも影響したと思います。ホームページで卒業生の方のお話を拝読して、現役のビジネスマンに適応性があると感じたこともUWTSDを選んだ理由です。

Q.入学前にもっていたイメージとのギャップ

59 歳の時に入学しましたが、おそらく私が最年長だろうと思っていたところ、私より年上の方がいらっしゃったのには驚きました。他には20代後半から50代後半の方まで、幅広い年齢層の男女が在籍されていました。これだけ年齢差のある方々が同級生として集まり、議論をしたり同じテーマに取り組んだりするということは、会社では味わうことができない貴重な体験でした。自分の子供くらいの年齢の生徒さんからフランクに話しかけていただいたり、心配していただいたり、時には厳しく誤りを指摘していただけるとは予想しておらず、入学前のイメージとは異なる良い意味のギャップを感じました。

Q.MBAでの学びを最大化するため、受講にあたって心がけていたこと

時間をかけて入念に予習・復習に取り組むようにしました。こんなに勉強したのは高校受験の時以来じゃないかと思います。どの講義でも毎週課題が出るわけですが、それに個人やグループで取り組むのは有意義な体験でしたし、翌週の授業で研究の成果をプレゼンすることは大きな喜びでした。他の生徒さんの発表を拝聴していても感心することが多く、特に私より20歳以上若い生徒さん方はパワーポイントを用いたプレゼンの見せ方が非常に上手いと思いました。私も負けないように指南書を購入して勉強しましたし、自分のプレゼンの質を上げるための工夫もしました。MBAでの学びを最大化することは常に意識にありましたが、目の前の課題に必死に取り組んでいるだけで自身の知見とスキルが向上していくのを実感することができました。それがまた新たな学びのモチベーションになりましたし、このプラクティスを崩さないように心がけていました。

Q.土曜日受講、予習・復習などの時間確保のためのタイムマネジメント方法

私は会社への通勤で電車に乗っている時間が約15分と比較的短いのですが、電車の中でも参考図書を読むようにしていました。帰宅した後もさっさと食事を終えて、毎日最低2時間は勉強していたと思います。予習と復習のバランスを意識しながら、時間配分をしていました。自分が好きで始めたMBAの勉強ですので、毎日楽しみしか感じなかったですね。そのお蔭もあり、授業は一度も欠席することがありませんでした。

Q.MBAでの学びが実務で活かされていると感じる部分

私はずっと海外関係の仕事をしていますので、例えば海外生産拠点の改善策についてCEOへ具体的な提案をする際など、生産ポートフォリオの見直しや現地社員の登用とか、MBAで学んだ知見を活かす場面の多いことに改めて驚いています。他には5ForcesやVRIOなどの分析手法も、MBAで幾つものケーススタディに実際に取り組んだことにより、非常に実践的で中身のある形で習得することができたと感じています。

最近の例を挙げますと、昨秋、私の勤務先が大きな展示会で新製品を発表した際、CEOからある特命を受けた私は聴き取り調査を実施したのですが、その調査結果を修士論文の執筆時に使った手法で分析し、かなりの分厚いレポートに仕上げて提出しました。このレポートは関係部署にも広く閲覧され、高評価を得ることができました。その他、担当するM&A関連業務においても、コーポレートファイナンスで学んだ知見を実践的に活かせるようになりました。個人的には、修士論文の執筆で指導を仰いだ先生が主催される学会にお招きいただき、講演する機会を頂戴しました。今までになかったアカデミアの人脈が広がり、様々な研究領域に身を置かれる先生方や異業種の経営者の方々との交流を通して、多様な考え方や信条に触れ、自身の考察の幅が広がったことを実感しています。これはMBA修了の大きな財産のひとつです。

Q.卒業後にどのようなビジネスや活動に取り組まれているか、または今後取り組まれる予定

海外のM&Aも担当していますが、今までとは異なるアプローチができるのではないかと思っています。また、修士論文では土地を買ってゼロから生産を立ち上げていく「グリーンフィールド投資戦略」を課題に選んだのですが、機会があればまた未開の地で私自身が経営者としてグリーンフィールド戦略を指揮してみたいと考えています。

これからMBAを目指す方へメッセージ

個々に事情は異なると思いますし、MBAを目指す動機も違うと思います。しかし、迷っているのであれば、是非前に踏み出した方がいいというのが私の意見です。MBAを修了した後に、やらない方が良かったと後悔することは絶対にない筈です。私くらいの年齢で経営に長く携わってきた人間でも、MBAで学ぶのはとても有意義なことでした。人間は学び続ける限り、成長が止まることはありません。学んだことを活かせる場所、活かせる機会は何歳になっても必ずあると思います。現在、迷っている方には是非入学をお薦めしたいですね。UWTSDは良い選択肢のひとつだと思います。

質疑応答

説明会参加者の方からご質問をいただき、T・H様のMBA経験からご回答をいただきました。一部ご紹介させていただきます。


Q.MBAを学ぶ前の経営とMBAを学んだ後の経営では何が今までと違ってきましたか?
A.私はこれまで現場に入って、従業員の先頭に立つことを是として経営をやってきました。しかし海外では、敢えて自らを現場から距離のある大局的な立場に置いた方が、経営者として上手くいく場合があります。特にヨーロッパではその傾向が強いので、しっかりとした経営理論を持って現地のステークホルダーと対峙しなければ、互角に議論をすることが難しい局面は多いことでしょう。MBA修了以前の私は、経営的な事案で反対意見をもらった時には、経験に基づく抗弁で何とか対処してきたのですが、MBA修了後は極めて明快且つ論理的に応答できるようになったと自覚しています。

Q.ご自身の経営の定石が、一般的な経営の定石と合っているのか確認したかったとのことですが、MBAを取得されてご自身の経営の経験とのギャップはありましたか?
A.それぞれの分野で少しずつ小さなギャップはありました。ストラテジック・マネジメントやアカウンティング・マネジメントに関して言えば、MBA修了前の私がやってきた経営の手法や切り口、方向性などは定石から大きく外れたものではありませんでした。しかし、HRマネジメントについては新たな気付きが多々ありました。自分が思い描いていたHRのあるべき姿は、あくまでも自分の勤務先に特有のHRマネジメントのあり方だったことを痛感しました。自分では客観的に従業員の優れた面も改善すべき面も公平に評価して、出来るだけ良いところを活かすようにやってきたつもりでしたが、経営者としてHRの定石をもっと承知していれば、「あのマネジャーは辞めなくて済んだかもしれない」と悔やまれる事例があることを思い出しました。ケーススタディを通して発見したギャップのひとつです。

まとめ

MBAの真価はダイバーシティとインクルージョンにあり、急速に変わるビジネス環境では多様な視点と柔軟な対応が求められます。授業では、異なる背景や経験を持つメンバーが集まり、肩書きを離れオープンに意見交換し、経験をシェアすることが求められます。これにより、各メンバーは自身の強みを活かしつつ、新たな洞察を得て、包括的で革新的なビジネス戦略を策定する能力が養われます。

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