今回は、金融機関において、事業部門・管理部門から監査部門へとキャリアパスを広げた卒業生に、ビジネス理論の現場への応用、多様な業種からの仲間との学び、そしてMBA取得後のキャリアパス構築などお話を伺いました。説明会の一部内容をご紹介します。

目次
卒業生プロフィール

野見孝行 様
某地方銀行監査部
公認不正検査士(CFE)
公認内部監査人(CIA)
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
学会:日本ガバナンス研究学会、日本監査研究学会
<略歴>
2003 私立大学理工学部卒業
2005 国立大学情報科学研究科修了、現在の勤務先に入行
以後、営業店・市場部門・リスク管理部門を歴任
2021 東京支店着任(4月)、UWTSDに入学
2024 英国MBA取得
2025 行内公募を経て、監査部に着任
Q.MBAを取得しようと思った理由
私は地方銀行の本店で10年近く勤務しておりました。地方都市で勤務していた当時は、MBA取得について全く考えておらず、また現在のようにオンラインでの学習が一般的ではなかったため、MBA取得は事実上不可能でした。そんな中、2021年4月に2度目の東京支店勤務が決まりました。実は1度目の東京勤務時に、当時の役員から「勉強するように」と言われていたことを思い出し、東京勤務という機会を活かして、10年越しでMBAの取得を決断しました。Q.ウェールズ大学トリニティセントデイビッド(UWTSD)を選んだ理由
私の場合は、入行前に日本の大学院で修士号を取得していたこともあり、海外のMBAプログラムと比較してみたいという気持ちがありました。日本国内で海外のMBAを取得できるスクールは他にもありましたが、最大の決め手となったのは「日本語で学べる」という点でした。仕事では英語を使用することもありますが、私の学びの目的は、英語力の向上よりもビジネスの原理原則をしっかりと理解することにありました。そのため、英語で授業を受けることは逆に内容理解の妨げになる可能性があると考え、日本語での学習環境を選ぶことに決めました。Q.講義の感想
私は銀行員という背景もあり、ファイナンスの講義が最も印象に残っています。参加者はさまざまな業界から集まり、経理・財務未経験の方も多いため、自主的な勉強会を開催し、期末にはテストやレポートの相互チェックを行いました。また、卒業後にティーチングアシスタントとして講義をサポートする機会があり、実務経験を経て改めて見ると、その内容の質の高さを実感しました。このプログラムのファイナンスはビジネスマネージャー向けの実践的な内容です。細かな経理処理ではなく会社の財務全体を学び、経営においてお金とビジネスは不可分であることを理解します。企画実行には必ず資金が必要で、責任ある立場になるほど予算管理は重要になります。こうした知識を身につけてキャリアを積み上げていくことをお勧めします。
Q.土曜日受講、予習・復習などの時間確保のためのタイムマネジメント方法
私が受講していたのはコロナ禍の時期でした。通勤ラッシュでの密を避けるため、始業の1時間ほど前に会社に到着し、講義テキストを読むなどの予習をしていました。講義によっては事前提出物が必要なものもあり、こうした作業は職場では難しいため帰宅後に取り組んでいました。このプログラムの特徴として、平日夜間のスクーリングがなく土曜日のみの授業だったことは大きな利点でした。コロナ禍が明けて業務量が増えたり、会社の東京支店の重要性が高まった時期に、平日夜間に授業があったとしたら、業務と学びの両立は難しかったでしょう。英国式の自主学習を重視した授業形式と週1回土曜日のみの講義だったことが、結果的に私にとって幸いでした。
Q.MBAプログラムで得たことや困難
一つ目は、当行の社内ニュースで自己啓発の取り組みとして私の経験が取り上げられました。「MBAで何を得ましたか」という質問に対し、最も大きな収穫は「学びの習慣」だと回答しました。学びの習慣は一生残るものだと考えています。また、若手社員に自己啓発やリスキリングの重要性を説いている上の世代自身が学んでいないという実態があります。そのニュースの中では「管理職世代も学ぶべきことが増えている」ことをお伝えし、管理職世代の学習意欲を促すきっかけにもなりました。二つ目の成果として、今年2月に社内公募で監査部への異動が実現しました。面接では、MBA取得の経験と「地域銀行のコーポレートガバナンス」をテーマにした修士論文が大きなアピールポイントになったと実感しています。
一方、困難だった点は、キャリアを中断せずに学ぶことの両立です。不可能ではありませんが、決して楽ではありません。特に業務の期末追い込み時期と授業の期末テストが重なることもあり、こうした時期の段取りが非常に重要になります。
Q.ご卒業後にどのようなビジネスや活動に取り組まれたか
この度、社内公募での異動が決まり、これからが本格的なスタートだと考えています。MBA取得と並行して専門資格の取得準備も進めてきましたので、今まさに新たな道が開かれたところです。MBA取得は終わりではなく、むしろ始まりです。修士論文執筆を通じて指導教授から紹介いただいた学会への参加、シンポジウムでの最先端の議論への参加など、学びを継続しています。
重要なのは、学んだ内容を業務にどう活かすかです。MBAでは特定の業務だけでなく、会社経営全般を広く学びます。私の現在の監査業務は特定業務のチェックだけでなく、会社の現状を健康診断するような役割です。会社の現状とあるべき姿を照らし合わせる際に、MBAで学んだことが一つのモデルになると感じています。
MBA取得を検討している方へのメッセージ
高校から大学に進学する際の大学選びでは、多くの方が学部や偏差値で決めてしまいがちですが、MBAスクール選びでは、自分の目的やありたい姿と照らし合わせて検討することをお勧めします。UWTSDは英国の基準に基づき、実務経験や管理職経験を出願条件としているため、受講生の年齢層は比較的高めです。しかし、これは同じような問題意識を持つ人々が集まる環境となっています。業界は様々でも、ディスカッションでは上下関係なく、共通の悩みを持つ方々と意見交換できる場となっています。日々の業務課題を解決するためのヒントも得られますので、ぜひチャレンジしていただければと思います。