今回は、信州大学医学部や研究機関において衛生学・公衆衛生学の研究・教育に従事し、現在は帝京大学大学院公衆衛生学研究科で産業保健に関する研究と後進の育成に注力されている津田洋子氏に、衛生学や産業保健の分野においてMBAでの学びをどのように活かされているのか、お話を伺いました。説明会の一部内容をご紹介します。
目次
卒業生プロフィール
津田洋子 様帝京大学大学院公衆衛生学研究科講師
<職歴>
1993年 北里大学衛生学部産業衛生学科 卒業
1993年 三光科学工業株式会社 技術センター
2005年 独立行政法人労働者福祉機構東京労災病院 産業中毒センター
2008年 信州大学医学部衛生学公衆衛生学講座 助手
2015年 信州大学学術研究院 助教(医学系)
2016年 株式会社インターリスク総研テクニカルアドバイザー
2018年 帝京大学大学院公衆衛生学研究科講師(現職)
2025年 ウェールズ大学トリニティセントデイビッドMBA学位取得
修士論文:健康経営度調査における健康施策と従業員の離職率の関係
― 従業員の離職を防ぐために企業は何をすべきか ―
Q.MBAを取得しようと思った理由
前職のリスクマネジメントコンサルティング会社にいた頃からずっと考えていたことなのですが、もともといた研究畑から実社会に出てみて、私自身の考えが「甘かったな」と痛感しました。どんなに良い研究成果でも、企業に受け入れてもらい、活かしていくには、どうしても経営的な視点が必要となります。良いのは分かっても受け入れがたい、という壁にぶち当たっていました。また、父と姉たちが税理士をしていて、家でよく経営の話をしていたのですが、理系一筋だった私には、家族が言う「経営の実動」が理解できずにいました。「理想論だけでは難しい」と言われ、経営の視点で物を言えるようになりたいと強く思うようになりました。そして経営の視点で言葉にしたときに説得力を持たせるために、学歴としてMBAをきちんと取ろうと決意しました。
Q.ウェールズ大学トリニティセントデイビッド(UWTSD)を選んだ理由
MBAを取得された方など、さまざまな方からお話を聞き、国内の大学院のことも検討しましたが、私の中では海外の基準で学べるという点が非常に重要だと考えました。さらに、単に資格を取るだけでなく、修士論文(修論)をきちんと書いて卒業できる大学院を探しました。修論は大変だと聞きましたが、それによって今までの知識を整理できると考えたのです。
また、当時の私には平日夜の受講は体力的に厳しかったので、オンラインで受講でき、対面があったとしても週末のみという環境も必須条件でした。そして、基礎的なところをきちんと理論的に学べるという点にも惹かれ、最終的にUWTSDのホームページを見て問い合わせました。事務局の方からお話を伺った結果、ここなら自分の求める学びが得られると確信し、入学を決めました。
Q.講義の感想
実際に入ってみて、大変は大変でした。でも、大変だったというのは今振り返って思うだけで、やっている時は本当に面白かったというのが本音です。自分が学びたいと思っていたことでしたから、苦労も楽しさに変わりました。読まなければならない書籍やテキストは、日本の大学と比較すると多いという印象でしたが、海外のMBA取得者の方に聞くと普通だよと言われました。シラバスでどのテキストのどの部分を使うか明確に示されていたので、時間がないときはその章だけを読むなど、効率良く学べる工夫ができたのが助けになりました。今考えると大変でしたが、とても楽しかったです。
Q.入学前後のギャップ
私は出願してから入学までの期間が短くて、気づいたら入学していたという感じでしたから、大きなギャップはほとんどありませんでした。やりたいと思っていたことを、「あ、こういう感じなんだな」と体感できたのが入学後のイメージです。私が入学したのがコロナ禍だったので、全国各地からオンラインで授業に参加していました。オンラインで授業を受けることが初めての体験で、純粋に「これは面白いな」と思いました。
また、オンラインでの授業でしたが、卒業後に実際に顔を合わせて集まることがありました。そのときは画面越しではわからなかったクラスメイトの個性に驚くこともあり、とても楽しかったです。
Q.土曜日受講、予習・復習などの時間確保のためのタイムマネジメント方法
私の場合、子どもがもう大きかったので、比較的自分の時間を作りやすかったです。まず、土曜日の講義が終わった後には、忘れないようにすぐに復習をしたり、次にやるべきことがあれば今のうちに手をつけておくようにしていました。それに引き続いて、日曜日の午前中も予習や復習に使うのが基本スタイルでしたね。ただ、日曜日の午後は、家族との時間や家のことのために必ずキープするようにしていました。また、片道2時間と長かった通勤時間を有効活用しました。電車の中でパソコンをいじるのは難しいため、ちょうど真ん中あたりにある1時間ほどの乗車時間を、本やスマホで知識を入れるインプットと、提出物の構成を考える時間にしました。集中しすぎると疲れてしまうので、1時間のうち30分ぐらい使ったら、残りの30分は頭を休ませるというサイクルを意識して、帰りの時間にもまたそれを再開するという工夫をしていました。最終的にパワーポイントやWordで提出物をまとめなくてはいけないときには、集中して1時間程度で一気に形にするという方法を取っていました。また、受講期間中は少し贅沢をして特急券を買い、必ず座って移動できるように工夫しました。座席を確保することで、限られた時間の中でも集中力を保ち、効率良く学習を進められたと思います。
Q.MBAプログラムで得たことや困難
時間を作らなきゃいけない、体力的に大変な時にレポートを出さなきゃいけない、修論を書かなきゃいけないなど、困難だったことはたくさんあったはずなんですが、終わってしまうと不思議と全部楽しかったことに変わってしまいました。最大の成果は、人との繋がり、つまり人間関係を作れたことです。私の同期は金融、経営者、介護系など、本当にさまざまな立場の方がいて、今でもSNSなどで繋がっています。さまざまな相談や質問ができる、この繋がりは何物にも代えがたい財産です。
そしてもちろん、MBAの講義を通じて経営者の視点を得ることができたことです。これにより、以前は「理想論」だと受け止められがちだった私の研究も、聞いてくださる人が増え、説得力が増したと感じています。この同期の繋がりは、現在の公衆衛生と経済、介護、金融といった分野を横断する学際研究を進める上でも、強力な力になっています。
Q.ご卒業後にどのようなビジネスや活動に取り組まれたか
研究の傍らになりますが、私は元々持っていたCertified Occupational Hygienist (COH)という資格を持つ人たちの生涯学習の場として、一般社団法人「日本COH研究会」を立ち上げました。この社団は、COHの仲間たちが入会して自己研鑽を積むための団体なのですが、この運営において、「どのような形で事業を起こしていったらいいのか」とか、「事業主の方々に受け入れてもらえるコンテンツをどう提供できるか」といったことに、MBAで学んだ経営的な知識や視点がすごく役立っています。MBAの知識のおかげで、事業の立ち上げ方をスマートに、効率良く進められたと実感しています。
MBA取得を検討している方へのメッセージ
入学前は「勉強時間をどう作ろうか」「体力は持つかな」といった悩み、入学後は「修論のテーマはどうしよう」といった不安があるかと思います。でも、ぜひ、パッと飛び込んでみてほしいです。飛び込んでみれば、必ず新しい世界が広がります。
そして、一番心強いのが同期の仲間たちです。皆、同じ道を通り、同じ悩みを乗り越えてきた人たちですから、素直に悩みを打ち明ければ、とても親身になって答えてくれます。そういう方々が集まっているのが、このMBAプログラムです。
色々考えていただくことはとても大事ですが、その一歩を踏み込んでさえしまえば、きっと楽しく充実した生活が待っているはずです。私も心から応援していますので、ぜひ頑張ってください。