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コラム

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職場の精神生活~離職率改善の鍵~

離職率の改善に関する相談が多い。ハーバード・ビジネス・スクールのテレサ・アマビール教授の調査によれば、職場生活の良し悪しは「僅かでも日々の進歩」と「手助けや助言を与えてくれる同僚の存在」が圧倒的に大きいという。ギャロップ社のエンゲージメント調査では、上司の影響が最も大きいと指摘している。

そもそもアイデンティティーの成長プロセスからみて、内発的動機が原因または引き金で転職などを引き起こすことは少ないと仮定すれば、離職などの原因の多くはX理論(アダム的欲求)の領域が多いのではないか。それは、人間関係などによる不安、マンネリ感による不安、将来の安定性に対する不安、そして単にもっと面白い職場やキャリアがあるのではないかというある種の可能性期待である。ご存じの通り、キャリアアンカーという概念は、職業選択というより「どのような仕事生活を送るか」の提唱である。職種や業種を選ぶ=whatではなくhowである。

勿論、ホランド理論にあるように、性格やタイプで向き不向き、或いは好き嫌いな仕事タイプはあるだろう。しかし、人と対話するのが苦手だからといってエンジニアや研究職向きかといえば、そうとは限らない。単にそうした経験をしてきていないだけ決めつけることはできないはずなのだが、今の世代は過剰反応世代ともいわれ、経験幅が狭い。よって、ちょっとしたことで感情が大きく揺さぶられる。そうした世代において自分の性格のタイプはこうだというのは、未熟すぎはしないだろうか。経験したことがないから「やる」。それが成長の前提である。ちなみに、「経験する」と「時を過ごす」とは異なる。

単に報酬を上げる、環境を良くするというのは、外発的動機であり、衛生要因である。達成動機と強く結びつく内発的動機とは異なる。そのように考えると、離職率が高い低いは別にして、離職をするというのは組織にとって決して悪いことではなく、双方にとっての選択ともいえる。

離職率を改善するのはどうしたらよいか。アイデンティティーの成熟度は別にして、鍵はチームということになる。課とか係とか固定的組織というより課題に挑戦している柔軟な組織としてのteamである。所属したteamがどのような目的と使命を持ち、成果を出すためにそれぞれが役割を設定し、日々それを意識し、挑戦しているかである。向いている方向が違う、役割を演じていないメンバーがいれば同僚は助言もすれば指摘もするだろう。それが仲間である。

管理者になりたくない、管理者人材が少ないといった話はよく耳にするが、大切なことは、人が育つ組織、環境、文化を整えることである。業界特性や組織特性は様々であるが、それは当たり前のことであって、家族と同様に、teamが核となる取組みを考えることである。

執筆:宮川 雅明