menuclear

コラム

MBA column

お客様の"Win"を語れるか~セールス力向上の原点~

■ お客様の"Win"に出会うまでのマインドをつくる

様々なテーマで研修やコンサルティングを受けていますが、ここ数年で増えているのはコミュニケーションです。多くの場合、はじめからこのテーマありきの相談ではありません。

「積極的に動いているのに、売上や成約率、件数といった数値に反映されてこない」
「どうも当社の営業は、お客さんから『かわいがってもらう』ようにならない」

といった事象からの話をいただくほうが多いでしょう。事象は拾えているけれども何をしたら改善されるのかわからないという面もあるのでしょう。研修で何か変えられるのではないかと思ったときに相談をいただきます。

事象をよくよく紐解いていくと、2つポイントが見えてきます。

1つめは、マインド面の違いです。

たとえばお客様先でのロールプレイングをしてみると、多くの人は商品紹介を始めます。もちろん、正確に内容を伝えるのも大事なことです。しかし売れるかどうかは込める熱量に結局は左右されるのです。熱量をこめられるかどうか-その元は自社や自社の商品が好きかどうか、にあります。いかに自社や自社商品を「いい」と思って勧められるかどうか、そのマインドセットを研修でやることで、ずいぶん変わった会社もあります。もちろん、「いい」と思って商品を勧めても断られることは当然あります。ある会社で聞い たところ、「断られるのが嫌」と思っている営業の方が全体の8割以上を占めていました。気持ちはわかりますが、断られた=スタートラインにたったと捉えられるかどうか。それだけでも次の言葉が変わるはずです。こうしたマインドを変化させていかないと、いくら商品知識を増やしてもなかなか売上や成約率、件数といった数値にはつながらないと言えるでしょう。

■ お客様の問題解決を導くロジカルコミュニケーションをはかる

もう1つのポイントは、ロジカルコミュニケーションとエモーショナルコミュニケーションの力を持ち、それを組み合わせられるかにあります。

そもそも、セールスはこちらの都合で売るものではありません。モノの消費からコトの消費に変わってきているとよく言われますが、特に今は、いい製品をつくって、仕様説明したら売れるという時代ではありません。

必要とされているのはお客様の「問題解決」です。

お客様が何に困っているのか。その真因は何か。それに対してどんな解決策があるか。そして自社の何がその解決策を実現するのか。お客様の困り事を起点に論理的な導きができるか、そこでコミュニケーションをとりながらお客様に理解してもらうようにできるか。こうしたロジカルコミュニケーションができないと、まったく自社製品とお客様の接点をつくることができずに終わってしまいます。 一方、はじめに会話ができる信頼関係をつくることと、最後にお客様が買おうと思ってくれるところは、エモーショナルなコミュニケーションが必要です。ロジカルとエモーショナルの組み合わせは上司部下のコミュニケーションなどでも必須となる考え方です。

なお、相手の問題解決を考えたコミュニケーションの重要性は、セールスだけではありません。一例を挙げると購買部の方から「何年も同じ発注先とやりとりしていたはずなのに『ご依頼点がよくわからないのです』と発注先から言われた」と話をうかがったこともあります。自分では言ったつもり。日本語はわかるのだけれど、伝わってこない。という事象が散見されますが、そこに必要なこともロジカルコミュニケーションなのです。

ロジカルコミュニケーションを高めるには、「考えること」の習慣づけが実は大切です。「なんでこうなっているのだろう」と一瞬立ち止まって仮説を持つだけで、ずいぶん次の言葉が変わることがあります。また仮説をつくるとロジカルにアクションを導き、後からその検証をすることもしやすくなります。

私自身、新卒で働いた会社で、部内の行事幹事になったときに仮説思考を用いました。毎年やっているイベントでしたが、関係者の満足度が過去最高に高くなるためにはどうしたらよいかを考えて、ロジカルにやることを導きだし、実際に企画実行して結果を目の当たりにすることができた経験です。相手の喜ぶことをいかにつくっていくか。この経験がその後の営業経験にも活かされましたし、今伝えていることの原点にもなっています。


執筆:株式会社SRプランニング 代表取締役 /
合同会社わいびっと 代表 /
経営コンサルタント 森田 哲