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働き方改革についての検討事項整理~長時間労働を見直す~

■ 長時間労働を強いる働き方の習慣

われわれは労働時間が長いことで、成果が上がる時代を経験してきました。長時間労働者が仕事のお手本でした。管理監督者や組織長などいわゆる昇進昇格をしている人には、長時間労働者が多いという調査があります。確かに働くことをいとわない人は成果を上げられるでしょうが、逆もまた真です。

従業員が2千名を超える規模の会社経営者と、将来を託す候補者について議論した際に、勤務時間や休日を気にしているようでは、会社を背負う責任者たり得るのかという言葉が発せられたことがありました。経営者は一年365日昼夜、経営の事を考え対応する必要があるという意味合いで、昭和チックであるといえばそうなのですが、一つの見識ではあると感じます。ただ公平を期すために付け加えると、その経営者はワークライフバランス大いに結構、オンとオフ、メリハリをつけた仕事を通じて、健康な肉体と健全な精神が正しい経営判断を生むはずだとも述べています。

■ 日本の働き方の常識は普通ではないという視点

すでに1970年代ごろから日本の働き方は正しいのかという指摘を受けていました。長時間の労働は、不公平であるというのが諸外国の識者の見立てです。実際、長時間労働は集中力が持続せず、見落としなどのミスも多くなります。また体力面でもきついものがあります。そのためどこかで帳尻を合わしてしまうので、無駄も多くなります。そこで、埋め合わせするために、よけいに長い時間働かざるを得ないという悪循環がうまれます。裏を返せば労働時間を増やせば、生産力を高め品質を高めるのだけれど、それでは労働強化による人間性阻害を生んでいるという考えです。組織として意識してまた無意識にでも、一斉の長時間労働を促すのは、健全ではないということでしょう。仕事と人生が一体化している人が多い、日本社会に対する厳しい問題指摘でした。

長時間労働を見直すべきという海外からの圧力は、内需拡大を処方した新前川レポートでもとりあげられ、国を挙げて労働時間を短くする方向へ舵を切りました。年間労働時間は1980年代には2100時間程度でしたが、1990年代初頭には1800時間代に漸減しました。そしてここ30年ほどは一日の所定時間を劇的に削減することはありませんでしたが、休日数を増加するなどの効果もあり、すこしずつ年間労働時間は減少しています。土日を中心に、週に二日の休みは当たり前になりました。

しかし育児休暇者や退職者の補充が行われず、一人あたりの労働量はかえって増加し、休みの前には労働時間が増えるというしわ寄せもあります。また周囲に気を遣うことで、帰りづらさがある職場もあります。最近は自分の仕事が終われば、遠慮なく帰ることのできる職場も徐々に増えていますが、働き方改革というかけ声は、結果として組織の中間管理者に重い負担を強いるという側面もあるのが現状でしょう。

■ 長時間労働を削減するために必要なこと

長時間労働を削減する方法として、いろいろなものがありますが、代表的なものをあげてみましょう。

① スケジュールの共有
仕事の繁忙に対してチーム内で仕事のやりとりを自発的に行うようにする。

② 方針の説明・理解確認
仕事に取りかかる前に指示命令を理解して手戻りなどの無駄を省く。

③ 仕事に必要な知識や技術習得・技能向上を図る
これにはコミュニケーションスキルなども含まれる。

④ 仕事の優先度と重要度を確認する
今取り組むことを確認して効率性を高める。

⑤ 会議の生産性の向上
仕事の内容・時間分析をすると、意見調整ということで括られてしまう会議の割合が多い。無駄な会議をしない、または会議方法のあり方を見直す。

⑥ 仕事で取り組むゴールとプロセスを共有
メンバーが何に取り組んでいるのかをわかるようにして、協同と牽制の仕組みをつくる。

⑦ 残業時間や休日出勤などを厳しく制限または禁止する
定型作業の廃止や自動化、業務分担の適正化、テレワークやリモートワークを推奨するなど。

なにより大切なのは、長時間労働を問題視して、職場全体で解決するという姿勢です。残業が恒常化する要因分析と対策を徹底的に行い、限られた人数と総労働時間で出来る仕事量の把握と、徹底的に成果を上げるための方法論を模索することが求められます。仕事を所与のものとせず業務量を減少し効率性を高めることと、本来すべき業務へシフトすることを通じ、価値を高めることが求められているといえるでしょう。

執筆:人事コンサルタント / コンソリューション
廣岡 久生